今年、またインターネットが滅びる。
バルス祭りは、2年に1回ほど開催される。
Xのトレンドが「バルス」一色に染まり、日本中が同じ呪文を叫ぶ夜が。
2026年、その予感がある。
根拠はこうだ。
『天空の城ラピュタ』は1986年公開。
今年でちょうど40周年。
しかも、今年の金曜ロードショーは、年明けからジブリを連発している。
1月に2本、5月に2本。
この流れで今年ラピュタが来ないわけがない。
断言する。今年バルス祭りは来る。
そもそも「バルス祭り」って何?という君へ
まずは映画の話から始めよう。
『天空の城ラピュタ』は宮崎駿監督が1986年に作ったアニメ映画だ。
空に浮かぶ伝説の島・ラピュタを目指す
少年パズーと少女シータの冒険活劇。
ジブリの原点にして、40年経った今も色あせない名作である。
クライマックスで、シータとパズーが同時に叫ぶ呪文がある。
「バルス!」
これが「滅びの言葉」だ。
この一言で、あらゆるものが崩壊する。
ラピュタも、ムスカも、すべてが終わる。
そして日本のインターネットは、この「バルス」に異常な反応を示すようになった。
金曜ロードショーでラピュタが放送されるたびに、バルスのシーンに合わせて全国のネット民が一斉に「バルス」と叫ぶ。
それがまさにバルス祭りだ。
バルス祭りの歩み。
これが歴史だ。
2000年代前半 ―2chの時代
最初は2ちゃんねるだった。ラピュタが放送されるたびに「バルス」の書き込みが大量発生した。
「他国からのサイバーテロでも落ちない」と言われた2chのサーバーが、バルスの瞬間に落ちた。
日本のオタクはサイバーテロより強かった。
2009年頃 ― Twitterへ
舞台はTwitterへ移った。リアルタイムで「バルス」とつぶやく人が急増し、祭りは全国区になっていく。
2011年 ― 世界記録、第一章。そしてアメリカが震えた。
Twitterの秒間ツイート数が世界新記録を達成。
25,088ツイート/秒。ちなみに2位はビヨンセの妊娠発表で8,868ツイート/秒。
日本のアニメファンがビヨンセに約3倍差をつけた。
そしてこの瞬間、アメリカのTwitter本社でも騒ぎが起きた。
米国のエンジニアたちが「サイバー攻撃が起こったのでは?」と慌てふためいたのだ。
実態は日本のアニメファンが呪文を叫んでいただけだった。
2013年 ― 世界記録、爆破。アメリカ人が金曜の夜を返上した。
前回の約6倍。143,199ツイート/秒。
もう一度言う。
1秒間に14万回以上「バルス」とつぶやかれた。
この祭りのために、Twitterの日本広報は放送の約2週間前に米国本社のエンジニアへ事前連絡を入れた。
エンジニアたちはサーバーを増強して対策を施した。
そして当日、10人以上のアメリカ人エンジニアが金曜の夜の予定を返上して残業し、リアルタイムでツイート数を集計した。
日本のアニメ呪文のために、アメリカ人が金曜の夜を犠牲にした。
米国本社の幹部たちはこの現象を「テレビを見ながらツイートするという使い方の非常に良いサンプル」と評価し、喜んだという。
バルス祭りは公式に認められた文化になっていた。
2016年 ― 企業も公式参戦
空気が変わった。
放送局が「バルスまであと何秒」と公式カウントダウン。
NTTデータがツイート数をリアルタイム計測。
Yahoo! JAPANのトップページに「バルス」ボタンが出現し、押すと画面が崩壊する演出まで登場した。
もはやバルス祭りは、インターネットの行事になっていた。
ちなみにこの年、計量器メーカーのタニタがバルス祭りに戦いを挑んで負けた。
(バルスにツイート数で勝負し、敗北したタニタは、一日だけ公式Twitterの社名を「株式会社バルス」にした。)
2024年 ― Xになって初めての祭り。そして静かになった。
2024年8月30日、19回目の放送。
バルスのシーンは23時22分ごろ。
旧TwitterがXに変わって初めてのバルス祭りだった。
結果は通信障害もなく正常運転。
かつてサーバーダウンの象徴だった「クジラ」(サーバーがアクセス過多でダウンしたクジラの絵)は現れなかった。
技術的には完全に勝利したXだったが、ツイート数は2016年の1分間の記録にも満たない約29万回にとどまった。
サーバーは鍛えられ、祭りは静かになった。
2026年、バルス祭りはどこで燃えるか
ここで正直に言わなければならないことがある。
Xはアルゴリズムによる「おすすめ」表示が主流になり、リアルタイムのタイムラインが機能しにくくなった。
バルス祭りの醍醐味は「同じ瞬間に全員が叫ぶ一体感」だ。
時間差で表示されたら、祭りにならない。
では2026年、あの一体感はどこで生まれるのか。
X(旧Twitter)はユーザー数では依然トップだが、タイムラインの時間差問題が残る。それでも惰性と伝統の力で主戦場になり続けるだろう。
Blueskyは時系列タイムラインが基本で、バルス祭りとの相性は実は一番いい。ただしユーザー数がまだ少なく、祭りには人が必要だ。
ThreadsはInstagram寄りの文化で、バルス的なノリとは相性が悪い。
結論として、2026年の主戦場はXであり続けるだろう。ただし40周年という節目が、離れていた参加者を呼び戻す可能性がある。
そしてどのSNSが一番燃えるかを観察すること自体が、今年のバルス祭りの見どころのひとつだ。
傾向と対策。これを読めば君も立派な祭り参加者だ。
傾向① バルスのタイミングは放送開始から約1時間55分後
21時放送開始なら、バルスはおよそ23時20分〜22分ごろ。
2024年は23時22分だった。
スマホのアラームをセット。
傾向② 放送前からトレンド入りする
バルスの瞬間を待たず、放送開始前から「バルス祭り」がXのトレンドに入る。それだけ期待値が高い証拠だ。
傾向③ 企業アカウントも参戦してくる
企業アカウントが何を言うかも見どころのひとつだ。
対策① Xを開いておけ
当日の21時頃にはXを開いて待機。バルスの瞬間に「バルス」と打つ。それだけでいい。難しいことは何もない。
対策② 映画もちゃんと見る
バルスだけの目的で見るのはもったいない。
ラピュタは普通に名作だ。
パズーの朝ごはんを見て腹を空かせ、ドーラに笑い、ムスカに怒り、そしてバルスで一緒に滅びろ。
最後に。40年分の「バルス」を、今年一緒に叫ぼう。
僕は、ジブリパークのある愛知県に住んでいるのに、チケットは予約制で激戦。
地元民なのに気軽に行けない。それが現実だ。
でもバルス祭りは違う。
テレビとスマホさえあれば、誰でも参加できる。予約もいらない。チケットもいらない。お金もいらない。
2011年にアメリカのエンジニアを震え上がらせ、2013年に世界記録を叩き出し、2016年に企業を巻き込み、2024年に静かになったバルス祭りが、40周年の2026年に復活する予感がある。
40年前、宮崎駿が作った滅びの呪文が、今年もインターネットを滅ぼす。
「バルス!」
さあ、備えよ。

